あなたがわたしの欠点を見出すとき 恋はすっかり終わるでしょう

わたしが思慮分別を持ってあなたに接するとき 恋は色褪せて消えるのよ

そんなことをあなたは知らない

女は抱かれないと離れてゆくもの 恋は友情物語ではないから

ハミングをひとつ 軽い風に吹かれて 香水の行方は町に消える

ありふれた あまりにもありふれた 交差点でわたしは信号機が青になるのを待っている

特別な目的がないにも関わらず 家路に急ぐひとみたいに

わたしは喫茶店の中にいる恋人たちの会話を想像する

たとえば 紅茶に角砂糖をいれるかどうか 尋ねる風景を

僕はブラック派なんだといって ホットコーヒーを飲む その手つきと 女の視線と

まるで風に隠れたできごとみたいに通り過ぎて こころの中で「きっと」と呟く

それから写真店のどうしようもなく格好のわるい看板を見上げる

彼女と高原へドライブをしたときに 撮った写真の上がりを待っている男がひとり

髪の毛をすこしは整えたら? ジーンズにサンダル 持て余している手 視線は落ち着きがなくて

古いカメラで写された ほんのすこし前の時間

いまどき銀塩なんてと想いつつ 髪を整えて写っている笑顔の男に複雑な気持ちを覚える

そんな男に限って 喫茶店では角砂糖の話をするのだ

狭い路地にはいったら 猫が一匹

きみは食事を探しているに違いない それなのにわたしを見て逃げてゆく

怯える瞳 ちいさくて まあるくて すこし涙目 警戒している毛並みと尻尾と後ろ足

わたしが去ったとき きみは安堵をするけれど 食事をもらえないことにがっくりする

そんなことを全部知っているようで 意味もなく帰り道を急ぐわたしは

青い空に咲いた雲が綺麗なことを伝えないひとみたいに

路肩の花が掠れるように繊細で 風に吹かれていることを気づかないひとみたいに

足を進めているの

そう 終わりなのよ あなた



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